==北海道新聞 社説==
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B型肝炎訴訟 長い苦しみ救ってこそ(2月21日)
B型肝炎北海道訴訟の和解成立に向け、原告の患者側と被告の国側が詰めの協議を進めている。
双方は札幌地裁が示した和解案の受け入れを決めており、残された最大の課題は、発症から20年が過ぎ、民法の損害賠償請求権が消滅したとされる患者たちをどう救済するかということだ。
こうした患者は、約700人の原告の中だけでも10人以上いるとみられる。
国側は24日に予定される次回協議までに方針を明らかにするという。
ごく普通に考えれば、長い間、病気に苦しんできた人こそ救済されるべきではないか。法律上の壁があるというなら、それを乗り越える政治的な解決法もあるはずだ。
地裁が示した和解金は症状に応じて3600万円~50万円。和解案は発症から20年以上の患者に対する扱いに触れていないが、原告側は案通りの額の支払いを求めている。
一方、国側はこれとは別枠での和解金を考えているようだ。金額は和解案を大幅に下回るとみられる。
そもそも、1948年に国民の義務として集団予防接種が始まった直後から、注射器の使い回しによって肝炎ウイルスに感染する恐れがあることは知られてきた。それにもかかわらず、88年まで事実上放置してきた責任が国にはある。
今回の訴訟に先立ち、道内の5人が89年に起こした裁判でも、2006年に最高裁が国の非を全面的に認めたのに、国は被害者全体の救済を行おうとはしなかった。
問題の解決をいたずらに先延ばしし、その末に「請求権は消滅した」と主張しても、被害者は到底納得できないだろう。
未発症の感染者への和解金は50万円と他の症状の患者と比べても相当に低い。
それでも和解案を受け入れたのは、早期の解決を最優先に考えたからだ。苦渋の選択だった。原告を再び苦しめることは避けるべきだ。
原告は和解の前提条件として、国からの謝罪を求めている。これに対し、国側は「しかるべき時に謝罪する」と繰り返すだけだ。その一方で、原告を線引きしようとするならば、国に対する不信感はますます募るだろう。
和解に向けては、予防接種で感染した親から二次感染した子供への救済も課題になっている。被害のもともとの原因が予防接種である以上、二次感染者もしっかりと救済しなければならない。
提訴の段階から原告が一貫して主張しているのは被害者全員の救済だ。その訴えに、国は真摯(しんし)に向き合ってもらいたい。